
自社企画商品による「粧美堂」ブランド化戦略とOEM事業における「モノづくりのパートナー」戦略を両輪に、モノづくりの進化に取り組む粧美堂グループ。アジャイル(俊敏)型組織の浸透と部門利益率の導入により、事業現場の自律的な収益性向上への取り組みが業績にも結びついています。
ー 代表取締役社長 寺田 正秀
「粧美堂」ブランド化戦略と「モノづくりのパートナー」戦略の両輪を回し、
「美を創る」企業として進化を続けてまいります。
2024年9月期(当期)の事業活動レビュー
成長戦略とインバウンド効果で好調を維持
当期は、雇用・所得環境の改善に加えインバウンド需要の増加もあり、景気は緩やかな回復傾向がみられました。一方で、地政学リスクの高まりに加えて、日銀による金融緩和の修正による市中金利上昇や急激な円安、原材料価格や光熱費の高騰による物価上昇など、企業経営を取り巻く環境は依然として不透明な状況が続いています。特に、当社グループにとっては、前期に引き続き予測を上回る円安進行による影響が大きな懸念材料でした。
こうした環境のもと、当社の成長戦略である、商品力強化による「粧美堂」ブランドの価値向上と、OEM事業における重点販売先の「モノづくりのパートナー」としての地位獲得、ECビジネスの推進に注力してまいりました。販売先により、好・不調は別れたものの、注力してきた成長戦略に加え、インバウンド効果などにより、結果的に連結売上高は前期を上回り、過去最高を更新しました。
高価格帯商材へのシフトと価格改定で営業利益が向上
表面的な利益率が低い均一ショップ向けの売上高増加に伴う売上原価の増加や、海外で生産を委託している自社企画商品の急激な円安による売上原価の上昇などがありましたが、付加価値を高めた高価格帯商材へのシフトや新商品導入のタイミングで価格改定を行い利益率向上に努めました。また、物流費などの一部の変動費は増加したものの、全般的に経費圧縮に努めたほか、例年発生する予防的な観点による在庫廃棄が、発注精度が上がったことにより減少したことなどから、営業利益が対前期比16.2%増と大きく増加しました。
在庫廃棄金額の推移(2019年9月期を100とした推移)

2020年9月期は、コロナ禍による影響、ならびにコンタクトレンズ販売をECに移行したことにより、廃棄金額が大きく拡大。
利益と生産性向上に対する取り組み
営業利益率10%実現を目指して導入した部門利益率という考え方が社員に浸透してきたことにより、社員一人ひとりが自律的に利益獲得に向けて、適切な商品価格の設定や原価の低減に取り組んでおり、円安傾向にあっても為替変動への耐性が向上しています。また、2024年1月に全社横断的な組織であるDX推進室を設置しました。社内のDX化を推進し、より一層の労働生産性の向上に取り組んでいます。
一人当たり労働生産性の推移(連結)

重点施策の方針と進捗
専門部署を設置し、自社企画商品を強化
当社の中期的な重点目標である営業利益率10%を達成するためには、利益率が高く、販路が限定されていない、キャラクターグッズを含めた自社企画商品を強化し、かつ収益性の高いECの販売を強化していく必要があります。
そこで、従来の商品企画部で自社企画の別注商品を担当していたメンバーは営業部に集約して機動力向上を図り、別注以外の自社企画商品を専門に担当する部門を商品企画部内に設置し、企画・デザイン・マーケティング担当者を配属しました。また、EC課も商品企画部に設置し、商品企画部で商品の企画・開発・販売までを一気通貫して担う体制を構築しました。当社の成長の源泉と位置づけているモノづくりについて、商品企画やデザインに携わる担当者の人材採用を積極化し、商品力の強化に努めてまいります。
自社企画商品による「粧美堂」ブランド化を推進
トレンドを捉えた安心できる品質の商品を、適切な価格で素早く企画・開発して上市できるところが当社の強みです。さらに、国内外の幅広い人気キャラクターライセンスを活用できるのが当社の差別化要因です。メイクツールやキャラクターコスメ、キッズコスメなど、「粧美堂といえば」という商品カテゴリーに注力し、お客様のニーズをいち早く汲み取って、スピード感を持って自社企画商品拡充に取り組み、「粧美堂」ブランドの認知向上を図ってまいります。また、日本が世界に誇るキャラクターを活用したコスメなどの商品を強みに、海外販売にも着手しています。
ライセンサーにとっての当社の特長を活かす
当社は売り場も確保していますし、幅広いカテゴリーの商品開発が可能です。ライセンサーにとっては確実に売り場に並び、幅広いカテゴリーに展開できることで収益も見込めます。また、キャラクターの世界観に合った売り場づくりを行うため、イメージの棄損も回避できます。ライセンサーにとってのメリットが多いことが当社の特長です。今後も当社の特長を活かして、人気キャラクターのライセンス獲得に努めてまいります。
「モノづくりのパートナー」としての体制を強化
「モノづくりのパートナー」としてのOEM事業については、円安の進行による原価高騰に対応すべく、海外工場のさらなる開拓、国内工場の活用などで選択肢を広げ、コスト・品質・カテゴリー・納期を当社が直接コントロールできる生産体制の拡充を図っています。
同時に、「モノづくりのパートナー」としてのシェア拡大も図ってまいります。当社の重点販売先上位4社の売上原価の合計は、約1.1兆円となっていますが、その販売先4社向けの当社の売上高の合計は約92億円であり、約1.1兆円に対する当社のシェアはわずか0.8%にすぎないという状況です。当社の重点販売先が国内外でさらに成長を続けると想定すると、当社の「モノづくりのパートナー」戦略には、依然として大きな成長の余地が残されています。今後も、企画・品質・スピード・マーケティングなどに一層磨きをかけて、販売先の信頼を獲得し、シェアを高めてまいりたいと考えています。
サステナビリティへの取り組み
設立100周年を見据えた取り組みとして、「プロジェクト100」と名付け、社内のさまざまなセクションから幹部候補生として中堅社員をピックアップし、中・長期的に会社が目指すべき方向性について定期的に議論を重ねております。各セクションの専門的な意見を集約し、次世代の成長基盤を将来の幹部社員が自ら構想し、自律的に会社の持続的成長に向けて取り組めるよう、議論を深めていきたいと考えています。
株主・投資家の皆様へのメッセージ
前期に引き続き、当期は円安に苦しみましたが、過去最高の連結売上高を更新することができました。外部環境の激しい変化のなかにあっても、これまで取り組んできたアジャイル型組織が機能し、部門利益率を導入したことで、利益に対する社員の意識も浸透しつつあります。イギリスの自然科学者であるチャールズ・ダーウィンの著書『種の起源』の一節から引用した「変化する種」という当社のDNAが社員にしっかりと根付き始めていると感じていますし、社員一人ひとりのレベルアップが組織の収益基盤強化につながっていると評価しています。
株主・投資家の皆様におかれましては、メーカーとして自社企画商品による「粧美堂」ブランド化戦略、そしてOEM事業での「モノづくりのパートナー」戦略の両輪をしっかりと回しながら収益基盤強化を図り、持続的な成長を目指す当社グループを変わらずご支援くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
2024年9月期 連結業績/2025年9月期 連結業績予想
